おすすめのCDアルバムを紹介するサイト
2009年10月31月更新
ホーム(光が丘の眺め 写真アルバム) プロコフィエフ大好き 音楽をより良く聴くために 私的音楽アルバム

1.はじめに

 ある曲を耳にするとたちまち心は過去のその瞬間へ"タイムスリップ"することがある。ヒット曲はひとつの時代を象徴するが、それを聴くひとにとっては、自分の置かれていた時のおのおのの記憶がある。好きな曲のメロディには、"あの日あの場所で聴いた曲"という記憶を私たちは携えている。
 タイトル「あの日あの場所で聴いた曲」は、単なるアルバムの紹介だけではなく、アルバムにまつわる思いに触れることによって、もっと音楽の楽しみを増やせないかと考えてつけた名前である。
 ポケットにしまっていたキャンディを友だちにひとつ分けてあげるようなつもりで、ぼくが大切にしている音楽アルバムをみなさんに紹介したいと思っている。アルバム選び、アルバムにまつわる思いは、ぼくの興味、関心事が中心になるが、多くの人に聴いてもらいたい音楽アルバムであることには変わりがない。アルバムと多くのひととの出会いのきっかけになれば、ぼくはうれしい。

2.アルバムリスト


CHOPIN Scherzo No.3,Mazurkas,Tarantelle/Vlado PerlemuterNEW!

SNUGGLED ON YOUR SHOULDER/BEVERLY KENNEY

Traces of Water/能勢祥二郎

公的抑圧/YMO

Remember To Remember/安全地帯

THE SEEDS OF LOVE/Tears For Fears


3.私的音楽アルバムあれこれ

6.「CHOPIN Scherzo No.3,Mazurkas,Tarantelle」/Vlado Perlemuter

ジャンル:クラシック(ピアノ)
曲目:
1 Scherzo No. 3 in C sharp minor, Op. 39
2 Mazurka in A minor, Op. 59, No. 1
3 Mazurka in A flat, Op. 59, No. 2
4 Mazurka in F sharp minor, Op. 59, No. 3
5 Mazurka in B, Op. 63, No. 1
6 Mazurka in F minor, Op. 63, No. 2
7 Mazurka in C sharp minor, Op. 63, No. 3
8 Mazurka in C, Op. 24, No. 2
9 Mazurka in B minor, Op. 33, No. 4
10 Mazurka in E minor, Op. 41, No. 1
11 Mazurka in C sharp minor, Op. 41, No. 4
12 Mazurka in C, Op. 56, No. 2
13 Mazurka in C minor, Op. 56, No. 3
14 Mazurka in F minor, Op. 68, No. 4
15 Mazurka in A minor, Op. 17, No. 4
16 Mazurka in C sharp minor, Op. 30, No. 4
17 Mazurka in C sharp minor, Op. 50, No. 3
18 Tarantelle in A flat, Op. 43


カタログ:ニンバスレコード NI5393
録音日:1983年 1986年 1990年 1992年

ショパンを聴くなら

 ショパンのCDやレコードを持っていなくでも、そのメロディを耳にしたことのないひといないだろう。

 ショパンといえば、どんな曲を思い出すだろうか。

 「子犬のワルツ」、「革命」、「英雄ポロネーズ」、「子守唄」、「葬送ソナタ」、・・・。

 さて、これから紹介するのは、ピアニスト、ヴラド・ペルルミュテールのショパン演奏である。

 ヴラド・ペルルミュテール(1904-2002)は、リトアニア領のカウナスに生まれ、その後フランス国籍を取得したピアニストで、ショパンのみならず、ラヴェルの演奏家としてもつとに著名である。

 ヴラド・ペルルミュテールは、ショパンのソナタ、ワルツ、エチュード、プレリュード、ノクターン、バラード、マズルカ、その他ピアノ作品など、多数のアルバムを残している。名作をひと通り聴くことができ、またどの演奏も深い味わいを持っていることから、ショパンを聴くなら絶対におすすめのピアニストである。

マズルカとは

 ここでは、ぼくが宝石のように大切にしているマズルカを紹介する。

 マズルカとは、ポーランドの民族舞踊のことをいう。ポーランドのマゾフシェ地方のひとびとのことを"マズル"と呼び、そのひとびとが踊っていたことから"マズルカ"ときている。なお、現在マゾフシェという地域は、1999年ポーランドの首都ワルシャワを抱えるマゾフシェ県にあたり、面積・人口とも国内最大の行政区画に区分されている。

 ポーランドのマズルカは三拍子、フィドルと呼ばれるバイオリン、ドゥダとよばれるバクパイプで演奏され、歌も入ることがあるという。民族舞踊特有のメロディ・リズム・ハーモニーを題材に、ピアノ芸術に仕上げられたのが、ショパンのマズルカである。

ショパンのマズルカ

 では、マズルカのすばらしさは何だろうか。

 メロディはあまりに甘く、近寄りがたいほどの美しさに溢れている。だが、どこか懐かしい。人生で触れる情緒を、異国の香りたっぷりの旋律を通じて楽しむことができる。舞踊から吹いてくる風の中から、ふわっとにじみ出る異国的情緒。ぼくらとは国が違っても、わかるような気がする。これらの情緒との親近感・一体感がマズルカのすばらしさである。

 マズルカがポーランドのひとびとの踊りからきているということは、日常のあるいは人生の喜びや悲しみを表しているとぼくは思っている。ポーランドのマズルカをモチーフとした、ショパンのマズルカはやはりそのエッセンスを写し取っているに違いない。

ヴラド・ペルルミュテールのマズルカ

 ペルルミュテールのピアノは、男らしく力強く、少女のようにチャーミングである。また、高貴であり、純粋であり、そして心暖かである。マズルカを詩情豊かに、すばらしい抑揚で歌い上げている。

 ペルルミュテールは、モーリス・ラヴェルから自作の曲について説明を受けている。作曲者にしかわからない演奏方法を伝授されたといわれている。だから、ラヴェルの死後、ラヴェルの曲はヴラド・ペルルミュテールの演奏が手本とされた。

 ショパンの曲は無論作曲者から教えられたはずはない。では、なぜひとの心を揺さぶるような演奏ができるのであろうか。

 モシュコフスキーやコルトーなどの師の存在ももちろんある。さらに、ぼくは思う。ペルルミュテールはジョパンという精神との一致を試みていたのではないかと・・・。

 一度でも、ペルルミュテールの味わいを知ってしまったら、もう離れられない。ぼくはそういう得がたい体験をした。みなさんにも感動をお分けしたいと考えている。

ニンバスレコード

 ニンバスレコードは、イギリスのレコード会社である。が、すでに倒産している。

 アルバムは豊かなホールトーンを含めて録音されている。ピアノ演奏にはぴったりな録音であるが、再生がむずかしい。もし、うまく再生できなくても、アルバムに原因があるわけではない。あなたのオーディオをもう一度チェックしてみてほしい。

ヴラド・ペルルミュテールのアルバムとの出会い

 では、ぼくとペルルミュテールのアルバムとの出会いを紹介しよう。

 図書館で手にした1枚のCD。ペルルミュテールを初めて聴いたのは、「ショパン ピアノソナタ第2番・第3番、舟歌」。

 第2番は、「葬送」と呼ばれ有名だ。味わい深いが、渋い演奏ではある。いま思うと、背伸びをして聴いていた自分がいる。

ペルルミュテールの音を知っているひとはあまりいない

 ニンバスレコードから出ているペルルミュテールのアルバムは、きちんとした音質で再生することが難しい。

 ぼくも、はじめの頃は、明瞭な再生ができなかった。ピアノとホールトーンがいっしょに収録されているので、ピアノの勢いある打鍵、粒立ちが、混濁してしまう。

 社会に出て、少し高価なオーディオを揃えた。しかし、音質になかなか満足できず、良い製品はないか模索していた頃である。縁があって、イギリスのオーディオメーカー、LINNに出会った。

 ペルルミュテールはどうだろうか。

 ピアノの音色が柔らかく、響きが美しい。それだけではない。音階が明瞭になり、ピアノの弦の音色が表れるようになった。オーディオであっても、楽器の音階は重要であることを知る。ペルルミュテールの演奏が生き生きとしてきた。ほんとうにすばらしい演奏である。このような演奏を聴けるのであれば、オーディオにかけたコストは決して無駄ではない。

 嬉しい反面、心配が生まれた。こんなにすばらしい演奏が録音されていても、「演奏が悪い」と誤解を受けてはいないだろうか。

 案の定、HMVオンラインショップの「商品ユーザーレビュー」(ピアノ独奏曲全集)では、"残響で音像がぼやけている"との指摘がある。繰り返し申し上げるが、ニンバスレコードは、正しく録音している。きちんとしたオーディオを用いれば、問題は解消されると、最後につけ加えておきたい。

(2009.10.31)


5.「SNUGGLED ON YOUR SHOULDER」/BEVERLY KENNEY

和名:「二人でお茶を+1」/ビヴァリー・ケニー

ジャンル:ジャズヴォーカル
曲目:
1 二人でお茶を
2 ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
3 過ぎし夏の思い出
4 モーズ・ブルース
5 キャント・ゲット・アウト・オブ・ジス・ムード
6 飾りのついた四輪馬車
7 スナグルド・オン・ユア・ショルダー
8 ザッツ・オール
9 ボール・アンド・チェーン(スイート・ロレーン)
10 霧深き日
11 ゲイ・チックス


カタログ:XQAM1003
録音日:1957年

天使の純真な歌声

 「私的音楽アルバム」は筆者の思い出に触れながらアルバムを紹介するページだが、最近注目しているアルバムがあるので急ぎ取り上げる。

 ビヴァリー・ケニーはアメリカ、ニュージャージー州生まれの女性歌手で、このアルバムは彼女がデビューする前に録音されたデモテープである。

 最初に感想から述べる。彼女はこのアルバムでカヴァー曲を歌うが、天使の純真な歌声を持つ、歌の天才である。ぼくはこんなに可憐で上品で、チャーミングな声を聴いたことがない。メロディの陰影、つまり明るさも影も偏らずによく歌っており、彼女の歌声に乗って、メロディラインをたどるのがとても楽しい。声質だけで歌っているわけではないところがすごく、恐るべき才能の持ち主だ。ぜひ聴いてみることをおすすめする。

 音楽は世に聴ききれないほどあるが、ミュージシャンの邪心が感じられる曲は意外に多い。邪心とは自分のために歌い、うまく歌って名声を得ようという下心のことである。そのようなミュージシャンの曲には"不純物"がいっぱいであり、長くは聴いていられなくなる。長年、様々な音楽を聴いていると、ミュージシャンの心根がわかるようになってくる。特にどのようなつもりで音楽をやっているのか伝わりやすいのがヴォーカルである。

 ビヴァリー・ケニーのすばらしいところは、能力に裏付けられた純真な歌声である。しかし、彼女の歌声はあまりに純真であることから、リスナーにとっては弊害もある。他のミュージシャンが見劣りして聴こえてしまうことだ。

 芸術は純粋な動機で取り組み、表現する姿勢が大切なのであって、音楽であっても不純なものが少しでも混じると、白いシーツにシミが残るように、汚れた低級な世界のものになっていく。

神様が選んだ特別なひと

 ビヴァリー・ケニーは神様に選ばれた歌手である。これからも歌に取り組み、多くの作品を残して、世界のひとびとに感動と喜びを与えてくれたら嬉しい。ぼくは才能のあるひとにはいつもそう思う。しかし、彼女は1960年、28歳で自殺をしてしまう。彼女には自殺願望があり、自殺を恐れて自らニューヨークの精神病院に入院もした。最後の数ヶ月は、精神科医の治療を受けていたという。

 今のところこれ以上のことはなにもわからない。たぶん、現世で彼女の生き方に反するなにかがあって、これを克服できなかったのだろうとぼくは思っている。現世には、美醜、善悪など相対するものが同一平面状に交錯して存在する世界である。特別な感覚を持ったひとは、混沌とした現世に耐えられなくなり、往々にして世を去ろうとする。ぼくらにはどうすることもできないが、もし自殺を思いとどまるきっかけが彼女のもとに訪れていたなら、運命もその道筋を変えたに違いない。ただ、自殺をするとそれですべてが終わるのではない。死後自分の魂がとても後悔し、長い期間苦しむことになる。だからひとは自殺をしてはいけないのだ。

気を取り直して

 ぼくらは幸いなことに天使の歌声ビヴァリー・ケニーの残したアルバムを今聴くことができる。わかっているだけで8枚のアルバムを残した。彼女の歌声を聴いていると、生身の彼女に引き寄せられる思いがする。もちろん皆さんには音楽を心置きなく楽しんでほしいが、彼女は一体どのような心境でレコーディングしていたのかと、ぼくはつい心配してしまう。

 いや、気を取り直してビヴァリー・ケニーの歌を楽しもう。彼女も歌が大好きで、ぼくらに歌の楽しさを教えてくれているのだから・・・。

(2009.7.12)

外部リンク
「モダンジャズやヴォーカルを聴こう」http://www6.ocn.ne.jp/~jazzvo/index.html


4.「Trace Of Water」/能勢祥二郎

ジャンル:ジャズ(ギター)
曲目:
1 Eyes of Childhood
2 Islander
3 El-fish
4 A Dew Drop
5 Hailstorm
6 Relic of Dream
7 Walts For K.C.
8 Flying Water
9 The River Flows

カタログ:自主制作
録音日:2001年2月から2002年11月

多彩な才能を持つ音楽家

 能勢祥二郎は武蔵野美術大学造形学部油絵科大学院を卒業後、公立小学校で美術教師の経験を持つギターリストである。2000年3月からは教職を去り本格的な音楽活動に入った。
 自主制作により発表したアルバムは2枚あり、今回紹介する「Traces Of Water」はセカンドアルバムである。なお、ファーストアルバム「BINOCULAR'S TRANSIT」も音楽的には同じ系譜にあり、おすすめアルバムに値するすばらしいCDである。
 アルバムは、作曲のみならず、演奏、録音、ジャケットの写真やデザインまですべて彼自身の手によるものである(ウッドベースなど一部の楽器は除く)。
 アコースティック系楽器は本業のギター数種のほか、シンバルやドラムスも聞こえる。多くはシンセサイザーによる演奏ではないかと思うが、これだけの音色の楽器をほとんどひとりで弾きこなし、曲によってはオーケストレーションまでこなしているのは驚きの才能である。
 自宅の録音室で録音したり集めたりした音源をコンピュータを使って、いわゆる"トラックダウン"し、CDを制作しているとのとこである。

能勢ワールド

 能勢祥二郎の音楽のジャンルは、この紹介ではジャズとしたものの少し迷って書いた。ユニークな楽想を持っていることから、既存のジャンルを思い浮かべられないのである。能勢祥二郎は自身のサイトで、"映画音楽とJAZZをあわせたような音楽"と形容している。しかし、ぼくから見ればそもそも楽想がそんなに平凡なものではない。大衆性があるように見えて、実は大衆的ではない。その音楽の中に邪念がなくどこまでも純粋である。既存のジャンルに混ぜてしまうのは、もったいないような純真な音楽性を持っている。

特筆すべきところ

 能勢祥二郎の音楽には、無駄、無意味な音符、また反復がない。登場する旋律、楽器演奏は一曲を形作るために、精密部品のように組み合わさっている。文芸作品でいうところの"章立て"も完璧で、場面展開、ストーリー性が確立している。このような曲は往往にして天才肌のひとが作るものであり、無駄がないという点においてはプロコフィエフの曲が持つ非凡性と同じではないかと思った。構想に5年間という時間をかけており、醸造されたエッセンスがダイヤモンドのように凝縮している。しかし能勢祥二郎の音楽には苦労で疲れ果てた様子はまったくなく、高度な楽曲にもかかわらず天真爛漫な印象すら受ける。

聴きどころ

 どれも聴きどころ満載の曲ではあるが、まずは能勢祥二郎のギターソロを楽しんでほしい。
 「6 Relic of Dream」
 「9 The River Flows」
 曲の調子もよく能勢祥二郎のギターがサウンドがどこまでも立ち昇る「8 Flying Water」も一押しの曲である。彼の大好きなヒグラシの音が収録されている。

(2009.5.30)


3.「公的抑圧」/YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)

ジャンル:ジャパニーズ・ポップス
曲目:
1 Rydeen
2 Solid State Survivor
3 Tong Poo
4 The End Of Asia
5 Cosmic Surffin'
6 Day Tripper
7 Radio Junk
8 La Femme Chinoise
9 Back In Tokio

カタログ:32XA-140
発売日:1981年2月21日(アルファレコード)

シンセサイザーの音色と印象的なメロディが際立つ

 イエロー・マジック・オーケストラは、細野晴臣(ベース)、高橋幸宏(ドラムス・ヴォーカル)、坂本龍一(キーボード)をメンバーとする、1978年に結成された音楽グループである。最初は海外で人気を博し、遅れて日本でブームになった。Rydeen、Tong Poo、La Femme Chinoiseなどのヒット曲を生み出し、シンセサイザーなどの電子楽器を多用した電子音楽は、彼らにさほど興味のないひとたちにまで影響を与え、社会現象としてとらえられるようになった。

 イエロー・マジック・オーケストラの楽曲は、親しみやすいメロディを電子楽器の音色で色付けしているところが特徴である。各曲は印象的なメロディが際立つため、劇画的な大衆曲になりそうではあるが、主題と主題の間に抽象的な旋律をはさむ構成となっていることから、優れたフュージョンを聴くような楽しみ方もできる。(1 Rydeen,3 Tong Poo,5 Cosmic Surffin,8 La Femme Chinoise)

 「公的抑圧」は現在、「Public Pressure」のタイトルで発売されている。内容は、第1回ワールドツアーのヴェニュー(ロンドン)、グリーク・シアター(ロサンゼルス)、ボトムライン(ニューヨーク)の海外公演を編集し収録しているが、最後の「Back In Tokio」では日本語の歓声が聞こえて、ちょっとほっとする。

テクノサウンドとライブ感

 イエロー・マジック・オーケストラのアルバムは20枚以上発表されているが、スタジオ録音のものより、ライブ録音をおすすめしたい。かれらのお得意はシンセサイザーやコンピュータによる自動演奏である。自動演奏は演奏のテンポ、アクセントに機械的な単調な印象を招きやすい。コンピュータを使って音色を表現するのは、斬新でよいと思う。つまり、楽器演奏は適切なゆらぎによって表情の豊かさを表現している。であるならば、電子楽器の音色にライブ感の加わったこのアルバムは冷たくならず、としても楽しく音楽を聴けるということである。あとは、聴いてのお楽しみ。

当時スーパーにオーディオ店

 以前は、ダイエーやイトーヨーカ堂などのスーパーの一角にはオーディオ店があって、たくさんの種類のコンポが豪華に陳列されていた。音楽が好きであることのほかに、教養としての音楽、電気製品への憧れ、贅沢を象徴するものとして、ひとびとの目がオーディオに向けられていた時代であった。オーディオに夢があり憧れていた古きよき時代を懐かしく思う。イエロー・マジック・オーケストラは、そのような時に耳にしたまったく新しい音楽だった。

ラジカセの時代

 当時、音楽ソースといえば、レコードかFM放送だった。録音はもちろんカセットテープ。ぼくは中学1年で、板橋区の西台にあるダイエーで、初めてステレオラジオカセット(ソニー:CFS-D7)を買ってもらった。シルバーを基調としたその外観は今写真で見ても、実に格好がよい。ちなみに大卒初任給で計算しなおすと、現在の20万円相当。ソニーといえば名門メーカーであり、毎晩夢を見るほど憧れる製品を作っていた。学校から帰ってくるといつもラジオで音楽ばかり聴いている姿を見て、飽きて無駄にすることもなかろうと親が買ってくれたのだと思う。アルバム「公的抑圧」は、そのラジカセで何度も何度も、胸をときめかせ聴いたものである。 (2009.4.29)


2.「Remember To Remember」/安全地帯

ジャンル:ジャパニーズ・ポップス
曲目:
1 Las Vegas Typhoon
2 Run Of Luck
3 Age
4 Illusion
5 Silent Scene
6 I'll Be On My Way
7 Big Joke
8 Return To Forever
9 冬city-1
10 Endless
11 I Need You

カタログ:UPCY6328(再発)
発売日:2007年3月7日(発表年1983 3133-11 KITTY RECORDS)

ファーストアルバム 若き玉置浩二のセンスが光る楽曲の数々

 安全地帯は、玉置浩二をヴォーカルとする5人のロックバンドで、1980年代「ワインレッドの心」などのヒットにより人気を博した。
 今回紹介するのは、ファーストアルバム「Remember To Remember」。
 安全地帯は、1988年に活動を休止し、再開するも2004年からはまた活動を休止している。最近の歌声を知るひとは、このアルバムの声に歳の若さを感じることだろう。活動していた間、安全地帯の楽曲の作風は移り変わりを示すが、「Remember To Remember」では、玉置浩二の無垢の音楽を聴くことができる。全曲において、作曲玉置浩二、作詞松尾由紀夫(7曲目除く)。アルバムの時間を水増しするような曲はなし。ラブソングの一種であり、主に男のロマンを表現するような、すばらしい曲の数々である。

 ぼくがこのアルバムに出会ったのは、高校3年のころ。高校生の小遣いでは、LPは高価でなかなか手に入れることができない。当時のレンタル店はレコードを貸しており、カセットテープに残して聴いていたものだった。時代はデジタルに変わり、CD版が発売されたが、価格は3,500円もした。収入とアルバムの価格を見比べると、20数年前の音楽鑑賞というのは、今よりもっと負担の大きい贅沢な趣味だったのだ。

聴きどころ

 高校生のぼくはこのアルバムをすっかり気に入ってしまった。

ラスベガスの街と男の心情を重ねあせた「Las Vegas Typhoon」。
「Run Of Luck」は、海岸の光景の中、幸せな気分で心が通じ合う彼女と俺を表現する。
「Age」、若い男女の別れの情景を綴る。
彼女への"愛情"を懐かしさに似た不思議な気持ちと表現する「Illusion」。
女性のしぐさからその心情に思いをはせ、いとおしむ視線を投げる「Silent Scene」。
ひとり車を飛ばすフリーウェイに自分の人生の方向を重ねる「I'll Be On My Way」。
男のドタバタを軽妙なメロディで描いた「Big Joke」。
彼女の心情を理解できず、失ってしまった彼女を思う「Return To Forever」。
「冬city-1」、風に漂うような優しいメロディに乗せて、美しい光景と男女を描写する。
「Endless」は心安らぐ、短いバラードソング。
「I Need You」は、アルバム中、最高のでき栄え。男の失恋後の状景を、カッコ良く、そして切なく、美しいサウンドの中で歌い上げる。

 「Remember To Remember」では、歌詞で美しい光景を描写し、玉置浩二が巧みなメロディをつけることによって、そこから主人公の心を表現している。一人称で歌うがけっして押しつけがましいところがない。昨今の曲が忘れてしまった作詞作曲のセンスがここにある。

 ぼくは最後の曲「I Need You」が大好きで、失恋?するときっとこのような心境になるんだろうなと想像しながら、繰り返し聴いたものである。
(2009.4.11)

外部リンク
玉置浩二公式サイトhttp://www.tamakikoji.jp/


1.「THE SEEDS OF LOVE(シーズ・オブ・ラブ)+4」/ Tears For Fears(ティアーズ・フォー・フィアーズ)

ジャンル:ブリティッシュ・ロック
曲目:
1 Woman in Chains
2 Badman's Song
3 Sowing the Seeds of Love
4 Advice for the Young at Heart
5 Standing On the Corner of the Third World
6 Swords and Knives
7 Year of the Knife
8 Famous Last Words
9 Tears Roll Down
10 Always in the Past
11 Music for Tables
12 Johnny Panic and the Bible of Dreams

カタログ:UICY3191
発売日:1999.6.28(発表年1989)

最初の1枚は

 ティアーズ・フォー・フィアーズの「THE SEEDS OF LOVE(シーズ・オブ・ラブ)」を紹介する。
 ティアーズ・フォー・フィアーズ(1981年〜)は、イギリス人ローランド・オーザバル(Roland Orzabal)とカート・スミス(Curt Smith)の2人組みによるロックバンドである。
 ティアーズ・フォー・フィアーズと言えば、自動車会社のCMにも使われたヒット曲、シャウト(Songs From The Big Chair/ 1985年)をあげなければならないが、楽曲のバリエーションの広さと明るいライブ感で音楽表現を繰り広げる、このアルバム「THE SEEDS OF LOVE(シーズ・オブ・ラブ)」をまずはおすすめしたい。

 なお、ティアーズ・フォー・フィアーズのアルバムでは、
「シャウト(Songs From The Big Chair/ 1985年)」
「シーズ・オブ・ラヴ(The Seeds Of Love/ 1989年)」
「キングス・オブ・スペイン(Raoul And The Kings Of Spain/ 1995年)」 があるが、それぞれに良いアルバムのため、その中から選ぶのはぼくの好みと言うほかない。

楽曲の特徴

 ロックがあまり好きでないひとのロックに対するイメージはある種決まった形があるかもしれない。早いテンポ、叫び声、ひずみっぽい音色の電子楽器。ティアーズ・フォー・フィアーズの生み出す楽曲には、そのような印象とは次元が異なるので、安心してトライしてみてほしい。

 ティアーズ・フォー・フィアーズの音楽を聴いて思うのは、音楽としてのメロディの良さ、編曲の良さ、多彩な楽器を用いたサウンドセンスの良さ、そして音楽による崇高な世界観の構築である。すべての音符、音響が、ティアーズ・フォー・フィアーズの描きたい世界観に一点に集中しており、あまりのできの良さに驚嘆する。リスナーは、あっという間に、彼ら音楽の世界に吸い込まれてしまうことに気づくであろう。ただし、ジャンルはやはりロックの範囲のものではある。

 それと、楽曲には歌詞がついている。ローランド・オーザバルの歌声も楽しんでほしい。そして、ティアーズ・フォー・フィアーズは、"知性派"と呼ばれることがあるが、曲のタイトル、歌詞が思索的であり、深遠な意味を持っている。彼らが音楽を通してなにを言おうとしているのか。当然のことながら、これらの詞が世界観構築のひとつになっている。英文が苦手なひとは対訳のある国内版を手に入れることをおすすめする。歌詞のある曲は、メロディだけでなく、もちろん歌詞の意味も合わせて味わうことにより、楽しさは倍増するとぼくは思っている。

聴きどころ

 ぼくが手に入れたアルバムは、オリジナル盤に1989年のシングルからの4曲のボーナストラックが入っている。聴き始めると、あまりの楽しさに全曲通しで聴いてしまうので、その点で言うと聴きどころは全曲ということになるのだが、強いて強いて言えば、つぎのとおりである。

 バッドマン・ソング
 シーズ・オブ・ラブ
 アドバイス・フォー・ザ・ヤング・ハート
 ジョニー・パニック・アンド・ザ・バイブル・オブ・ドリームズ

 ティアーズ・フォー・フィアーズの曲は、秋の風にぴったり合うような雰囲気を持っている。更けゆく秋の中で思索的な歌詞に思いをめぐらす。彼らは、地球世界や人の生きる人生に、叫び、悲鳴を上げている。"Sowing the Seeds of Love" 愛の種をまく(?)このアルバムでは少し希望を見せているのだろうか? 素晴らしいサウンドセンスが悲しみの世界観を包んで、そして、ぼくらを招き入れようとしている。

(2009.4.5)

このページの上へ